Project.02

あるべきクルマ社会の姿を思い描き、次世代技術に挑む。

安全・環境・快適への貢献。アドヴィックスはクルマの進化を先読みし、次世代技術を創出している。そこには、未来のクルマ社会を俯瞰しながら、アイデアを生み出し実現へと導く技術者たちがいる。

クルマの挙動を統合的に制御し、
危険を回避。

自動運転やさまざまな運転支援技術に対する社会的期待が高まっている中、安全で快適な走りを提供すべく、アドヴィックスも技術開発を進めている。ブレーキに関する幅広い製品を扱うアドヴィックスは、これまでもメカ・ソフトの両面からクルマの基本動作である「走る」「曲がる」「止まる」すべてに携わってきた。今後は、それらを統合的に制御することに注力し、よりユーザーにとってうれしい機能を磨き込んでいく。

たとえば、「ブレーキECU」は、ブレーキはもちろんエンジン・ステアリング・サスペンションまで、車両全体の状態を把握し挙動をコントロールできる。先行開発に挑む野口は、各デバイス制御も視野に入れ、ユーザーへ安全・快適を提案する機能の開発に取り組んでいる。携わった一例が「トルクベクタリング」。クルマが高速でコーナーに進入した場合、曲がりきれずに走行ラインが膨らむことを避けるため、ブレーキECUが各種センサー情報から車両状態を把握し、車両の旋回をアシストする。旋回内輪だけに自動でブレーキを効かせドライバーが描く走行ライン通りにスムーズに旋回できる制御。最大の問題は、制御作動時のドライバーフィーリング。どんな路面でも安全で快適な機能を提供するため、制御設計だけでなく、制御ソフトを実車に搭載してはテストコースで評価を繰り返し、制御をつくり込んでいった。こうして確立した新技術は、すぐに世に出るものではなく、数年後の実現を目指して開発が進められるもの。まさに、将来のクルマ社会に大きな影響を与える仕事だ。

回生協調ブレーキの応答性向上が
もたらすうれしさ。

「回生協調ブレーキ」は、これからのクルマに求められる「安全」「快適」「環境」の3つの性能のうち、燃費向上の面で環境に大きく貢献する製品だ。「回生ブレーキ」とは、ハイブリッド車や電気自動車の減速時に、通常ならブレーキディスクとパッドの摩擦熱として放出されるエネルギーを、電気エネルギーとして回収・再利用するもの。その回生ブレーキで補いきれない制動力を油圧ブレーキで補うのが、回生協調ブレーキだ。

尾関の担当した案件の一つが、回生協調ブレーキの応答性向上。構造面では蓄圧器とメカレギュレータを導入して、少量のブレーキフルードを高圧で送り出す方式が採用された。制御担当の尾関に求められたのは、ブレーキバイワイヤ構造であってもドライバーの意図通りの制動を実現すること。高圧ゆえ、制御の量とタイミングを誤ると思わぬ事故につながるおそれが大きくなる。あらゆる走行状況に対応できるように、緻密な判定ロジックの構築に取り組んだ。この難しい課題をクリアした新たなブレーキバイワイヤ機構は、応答時間の低減と制動距離の短縮という進化を遂げた。この取り組みは、事故の減少という社会的なうれしさや、乗り心地の改善というドライバー目線でのうれしさの実現につながる。

クルマの挙動のすべてを操る新技術を、
確実に世の中へ。

いま、クルマに求められる機能が次々と増え、クルマ社会全体も大きな変革期を迎えている。個々の既存技術を高めていくことに加え、「クルマをどうしたいか?」という観点で次世代技術を発想していくことが重要だ。

アドヴィックスは、ブレーキシステムを通して、車両挙動をコントロールすることに携わっている。また、ソフト開発とハード開発それぞれの高い技術力を組み合わせ、双方のスペシャリストが密な連携を取っている。この強みがあるからこそ、新技術を机上の計算だけに終わらせず、実現可能なものに育て上げることが可能だ。クルマ全体の挙動を考えながら、アイデアを現実に。アドヴィックスだからこその知見と組織基盤が、次世代のクルマに求められる安全・環境・快適をリードする技術を、世の中へと送り出している。