ファウンデーション技術部
服部 一孝
2011年入社 機械工学専攻
※部署名や役職名などは、取材当時のものです。
ファウンデーション技術部
服部 一孝
2011年入社 機械工学専攻
※部署名や役職名などは、取材当時のものです。
自分の可能性は、自分で広げていく。
そこに限界はない。
大学では学生フォーミュラにメカニックとして参加していた。ブレーキの重要性を知り、アドヴィックスの会社説明会に参加。そこで先輩技術者から言われた「どんなに技術力が高くても、結局、人と人との信頼関係で仕事の成果が決まる」という言葉に興味を持った。その先輩技術者とは、入社したのちに上司となる森田慎一であった。
Section.01
ブレーキキャリパーが発する「鳴き」を低減する。
入社してすぐに私が配属されたのが、会社説明会で会った森田さんのチーム。以来、ずっとこの部署で海外の高級車向けブレーキキャリパーの設計を担当してきました。当時はアドヴィックスが初めてダイムラーのブレーキを受注した直後。以来、私はダイムラーのブレーキキャリパーの設計担当として、海外の開発拠点とコミュニケーションを密にしながら欧州向け高級車ならではの技術課題の解決に取り組んできました。
私たちにとっての最大の技術課題とは、ブレーキ鳴きの低減でした。ブレーキ鳴きとは、制動時に起こる「キーッ」という不快な音(高周波の振動)のことです。特に冬場の気温が低い状態で起きやすくなります。求められたのは「どんな厳しい環境でも高い静粛性を持つブレーキ」でした。またブレーキキャリパーは見栄え品質や外観の耐久性も求められる部品です。それだけに、高圧洗浄機による洗車が一般的な欧州では、それに耐えうる塗装技術を開発する必要がありました。
開発は順調に進んでいきましたが、入社3年目、量産を翌年に控えたタイミングの実車評価で、突然新たな鳴きの問題が発生しました。しかも実車試験は気温が下がる冬の間しか行えないため、約1カ月半という短期間で改善しなくてはなりませんでした。
Section.02
ブレーキ鳴きのことになると、
つい熱くなるメンバーと議論する。
鳴きのメカニズムは大変複雑です。外気温や湿度などの環境に加えて、ブレーキ以外の周辺部品も鳴きに影響を及ぼします。世界中のブレーキエンジニアや研究機関が現象解明に取り組んでいますが、まだ未知の領域が多くあります。
私たちは蓄積された技術を活かし、目には見えない微小な振動を『可視化』することで現象を解析し、解決の糸口を見つけていきました。私や森田さんを含めた全メンバーが意見を出し合いました。私は最年少でしたが、立場や経験に関係なく意見を出し合える環境があり、熱い議論が繰り広げられました。全員、ブレーキ鳴きのことになるとつい力が入ってしまいます。
その結論をもとに新たに私が部品を設計し、国内外の試作メーカーで製造。すぐテストに組み込み、日本・北米・欧州の3拠点の同時評価を計画し、実行していきました。こうして、私が中心となって、日米欧の3拠点が代わる代わる稼働をすることで、24時間体制で問題を解決していきました。ここまで全員が協力して問題を解決できたのは、ブレーキが人の命に関わる最重要部品だからという理由もあります。でも、何よりもブレーキ鳴きという未知の現象への挑戦を、私を含めた全員が楽しんでいたからだと思います。
Section.03
自分の仕事は、自分で広げていくというスタイル。
入社以来、私は大事にしている想いがあります。それは、与えられた仕事をこなす以上に自分のやりたいことに積極的に挑戦し、自分の仕事の幅を広げるということ。たとえば私は決して英語が得意ではありませんでしたが、欧州と北米の拠点とのやりとりの中で何か疑問があると、どんな小さなことも海外メンバーに直接コンタクトを取るよう心がけていました。海外のローカルスタッフには毎日電話をかけ、週に3つは英語の資料を作成し、積極的な姿勢を続ける事で任せてもらえる領域を増やしていきました。
このプロジェクトを通して多くの学びがありました。今後は一つひとつの技術をより深めていきたいです。そして、世界中の技術者とより高いレベルで議論できるようになることが私の次の目標です。