制御ブレーキシステム 技術部

竹谷 佑介

2006年入社 数理情報専攻

※部署名や役職名などは、取材当時のものです。

制御ブレーキシステム 技術部

竹谷 佑介

2006年入社 数理情報専攻

※部署名や役職名などは、取材当時のものです。

死亡事故を減らしたい。
その想いが壁を越える力に。

幼少期、測量士の父が手がけた道路を誇らしげに自慢する姿に憧れ、自分もモノづくりの道へと大学で制御工学を専攻。ある日、目にしたのは、駐車場でクルマが子どもに衝突しそうになる場面だった。それが彼の「安全なクルマをつくりたい」という思いの原体験である。

Section.01

ブレーキの制御設計は、クルマ全体の性能をつくる仕事。

ブレーキの制御設計は、いわば「クルマの性能をつくり込む」仕事です。たとえばESC※1の場合、4輪それぞれに適時ブレーキをかけることで、横滑りを防止する。ACC※2では、先行車両との距離や速度によって、適宜減速し、安全な車間距離を保つ。どちらもドライバーの気づかないところで動作し、乗る人の安全性・快適性を実現しています。しかもスポーツカーから大型トラックまで、ECUに搭載される制御ソフトによって車種ごとに異なる性能をつくり出しているのです。実際の業務としては、車種に応じた制御の仕様を決定してソフト設計を行い、できあがった制御ソフトを実車に搭載して性能確認を行います。一般の道路と同じあらゆる路面状況でテストを行うため、冬には北海道のテストコースへ、発売時期によっては日本の夏に雪を求めニュージーランドに飛び、ドバイやオーストラリアの砂漠で試験をすることもあります。雪や雨・段差・砂利道といった各状況の路面に、ハンドル操作やブレーキの踏み込み操作など多種多様な評価パターンとを掛け合わせると、検証すべき組合せは膨大。年間の3割ほどを出張に充てて、実車で性能をつくり込み、完成へと導きます。※1: Electronic Stability Control※2: Adaptive Cruise Control

Section.02

1メートルで救われる命を想い、1ミリ秒の世界を追求。

クルマの進化につれてブレーキ制御が担う機能は増え、1つのECUに搭載する制御ソフトのソースコードが数十万行に及ぶ場合もあります。時間をかけてつくり込みますが、開発途中で車両側に大幅な変更が入れば、時には根本から見直さねばなりません。入社5~6年目に任されたプロジェクトでは、カーメーカーから車両開発の最終段階で、燃費向上のためタイヤを転がり抵抗が小さいものに変更する旨を伝えられました。当初の設計通りのABS制御では制動距離が1メートル長くなり、短縮の必要が生じました。期限が1カ月後に迫る中、途中までは順調でしたが、残りの30cmに苦戦。ABSではブレーキ状態の検知から判定、ロックを防ぐ制御までを、人間の反応速度とされる200~300ミリ秒よりはるかに速い1/1000秒単位で行います。

ミリ秒単位でタイヤの動きを解析し、試行錯誤の末にたどり着いたのは、車両の荷重移動によるタイヤとブレーキの特性を考慮し減速する方法です。大きな壁を乗り越えられた原動力は、日頃から実車評価に立ち会い車両の動きをよく観察したからこその発想と、何より入社時から抱いていた「1メートルで救われる命がある」という想いです。

Section.03

本当に安全なクルマはどうあるべきかを追求したい。

「安全なクルマをつくりたい」という想いを、現在も常に持ち設計に当たっています。実際、命に直結する製品に携わり、安全なクルマづくりに貢献している実感を味わえています。先ほど紹介した案件では、「安全に乗ってもらうためにはどうしたらいいだろう?」と懸命に考え抜いたことが、自分自身の成長にもつながりました。また、制動距離などの数値面を満たすだけでなく、「こんな挙動のクルマは嫌だ」「こうだったらうれしい」と、ドライバーの視点で品質をつくり込む経験もできました。

今後もそれらの視点を持ち、より安全で便利なクルマづくりに携わっていくつもりです。そして既存のブレーキシステムの技術にとらわれず、本当に安全なクルマはどうあるべきかをイチから企画し、これまでにない安全で便利なブレーキシステムをお客様に提案する仕事にも、挑戦したいと思っています。