ロボコン
「完全勝利」で4度目の総合優勝。
9ヶ月の戦いを支えたチームワーク。
小嶋 伸一郎
制御第1技術部2015年入社 制御工学専攻
「仕事以外でスキルアップにつながることを始めよう」と、入社前から決めていた。ロボコン活動を知ったのは、新入社員研修。日頃接する機会のない他部署の人と知恵を絞ることに楽しみを感じ、参加を決めた。
塚本 泉帆
制御第1技術部2014年入社 ソフトウェア工学専攻
大学ではソフトウェア工学を専攻したものの、プログラミングは苦手な部類。システム開発部門への配属が決まり、不安を感じていた矢先、先輩から『ロボコン、やらないの?』と声をかけられ、勉強のつもりで参加。
※部署名や役職名、文中の大会成績や受賞歴などは、取材当時のものです。
IoTやクルマの電動化が進み、ソフトウェア技術の重要性が高まる中、アドヴィックスは若手エンジニア育成を目的に業務外の活動として2006年大会から参戦。過去4回の総合優勝を誇るなど強豪として知られています。2017年大会は、「デベロッパー部門アドバンストクラス」で「競技部門(実走競技)」と「モデル審査部門(設計審査)」をともに制して総合優勝。“2種目制覇”の完全勝利は、アドヴィックスにとって初の快挙です。栄冠を手にしたのは、20代を中心とする若手主体のチーム。その熱い闘いを振り返ります。
2月から本格始動。
9ヶ月にわたる熱い戦い
「ETロボコン」は、毎年9月から10月にかけて、予選にあたる地区大会が全国で行なわれ、それを勝ち抜いたチーム同士で11月の全国大会を戦います。2017年大会は、全国で321チームが地区大会に参加。アドヴィックスは東海地区で優勝し、 41チームが参加した全国大会で「競技部門」と「モデル審査部門」の2部門を制して総合優勝に輝きました。
秋の地区大会にむけ、アドヴィックスのロボコンチームが始動するのは、大会の概要が公表される2月。その後「実施説明会」を経て、4月には各部門のルールを定めた規約がリリースされて、チームの活動はさらに加速していきます。『規約が発表されると、まずそれをメンバー全員で隅から隅まで読み込んで内容の意味や狙いを確認して意識の共有をはかるとともに、不明点や疑問点を洗い出し、チームとしての方針や行動計画を明確にしていきます』(小嶋)
方向性が明確になると、設計モデルを作成し、それをプログラムに落とし込む実作業が始まります。設定されたコース上を、さまざまな課題をクリアしながら、いかに速くゴールするか。勝つために必要な機能を明確にし、分担して設計モデルをつくり、全員でレビュー。仕様が固まったところから随時プログラム開発を進めていきます。
『チームの活動は業務外です。メンバーは、仕事を終えると食堂に集まり、作業に没頭します。時間が足りない時は、週末に集まることも。私の場合は自宅が遠く、週末会社に出るのが難しいので、ネットでミーティングに参加することもあります』(塚本)。誰に指示されるわけでもない。好きなもの同士が自発的に集まり、好きなことに打ち込む。ロボコン活動には、同好会や部活動にも似た楽しみがあります。
緊張の中で迎える「決戦」の日
プログラムができ上がるとロボットに実装し、走らせて機能を確認します。細心の注意を払ってプログラムづくりをしても、いざ走らせてみると、思い通りには動いてくれないことも。『プログラムを起動しても、ロボットがピクリとも動かず、原因究明と対策に追われることも珍しくありません。』(小嶋)
設計モデルの作成やプログラムづくりにかかりきりになる5月以降は、シーズンの中でもいちばんパワーがかかる時期です。とりわけ大会直前の1ヶ月間は、慌ただしさもピーク。チームにはピリピリした空気が流れます。それでも、「良いモノをつくりたい」という思いは同じ。意見の違いはあっても、チームの結束が乱れることはありません。プログラミングの作業には、「ここまでつくり込めば完成」というゴールはない。わずかでも時間があれば、機能を磨くためにパソコンに向かいます。できるところまでやりきろう――。そんな思いの中で、作業は大会前日の夜まで続きます。
本番当日は、ピーンと張りつめた緊張感に会場が包まれます。そんな中メンバーは、祈るようにスタートを待ちます。
『本番では、何が起こるか分かりません。思った通りに動いてと、ひたすら願うだけです』(塚本)。無事にスタートしても、安心はできません。当日のコースの微妙なズレや会場の照明が影響して、ロボットが想定外の動きをすることもあるからです。『この時ばかりは、みんな口数も少ないですね(笑)。昼の食事が喉を通らないメンバーもいるほどです』(小嶋)。それだけに、全国大会で総合優勝を果たした時は、誰もが信じられない思いでした。
優勝の喜びを実感できたのは、表彰式が終わり、ライバルチームから祝福を受けた時でした。
大胆にチャレンジできるのが、
いちばんの面白み
歴代の先輩の跡を継ぎ、「2種目制覇での総合優勝」という最高の結果を残せたことに、メンバーは、感慨もひとしおです。『強豪チームとしてのプレッシャーとも戦わなくてはならず、「どうすれば勝てるか」ばかり考えていた気がします。それだけに総合優勝は、大きな価値があると思います」(塚本)
先輩たちの残したものを大切にする一方で、チームでは、自分たちのアイデアで新たな取り組みも始めました。集めた資料や議事録、作業の詳細を記したノートなどを、誰が見ても分かるように残し、チームに新メンバーが加わった時は、個別に先輩が教える決まりもつくりました。『ロボコンチームの活動は、あくまでエンジニアのスキルアップが目的です。自分たちの考えでどんどん冒険していける。失敗を恐れず、大胆な挑戦ができるのは、業務外だからこそできるロボコン活動の魅力です』(小嶋)