ギヤポンプ生準部 生産準備室 グループリーダー

鈴木 寛之

2004年入社 工業経営専攻

※部署名や役職名などは、取材当時のものです。

ギヤポンプ生準部 生産準備室 グループリーダー

鈴木 寛之

2004年入社 工業経営専攻

※部署名や役職名などは、取材当時のものです。

この手でつくる、
ギヤポンプの次の進化。

学生時代、バックパックを担いで東南アジアを中心に世界を旅し、いたるところで「made in Japan」の製品が人気を集めているのを知り、日本がモノづくりの国であることを再確認。自分もその一翼を担いたいとメーカー、とりわけ基幹産業として強い影響力を持つ自動車業界を志望し、アイシン精機に入社を決めた。入社後は、一貫して生産技術。2016年、アドヴィックスへ転籍。

Section.01

すべてが異次元。「ギヤポンプ内製化プロジェクト」。

アイシン精機の時代も含め、20年近く生産技術一筋に歩み、回生協調ブレーキ、ABS、ESC(横滑り防止装置)など、制御系を中心に多種多様な製品の量産化に携わってきました。アドヴィックスに供給する部品も数多く手がけ、2016年2月にデンソーから制御ブレーキ製品の生産を移管してその構成部品であるギヤポンプを内製するプロジェクトが始まると、新しく発足した「生産準備室」のグループリーダーとして工程設計から設備の立ち上げまでを陣頭指揮しました。ブレーキ関連製品は、人の生命にもかかわることから高い信頼性と品質が求められ、一般の機械製品よりも高精度につくられています。形状の誤差は、通常100分の1㎜単位。しかしギヤポンプは、そのさらに10分の1=1000分の1㎜の誤差しか許されません。設計図面を最初に見た時は、どうすれば量産品でこれだけの精度の製品を実現できるのか、見当もつかなかったというのが正直な気持ち。しかも予定された期日まで、残された時間は1年余り。設備の搬入やテスト生産などの準備期間を考慮すると、工程設計や設備の手配にむけられる時間は数ヶ月しかありません。今までとは何もかも違う別次元の世界に思えて、「本当にできるのか」という不安ばかりが先立ちました。

Section.02

多くの人の努力が結実したプロジェクトの成功。

ギヤポンプは、30余りのパーツでできています。そのうちミクロンオーダーの精度が求められるのは、インナーギヤ・アウターギヤ・ケーシングという3つのキーパーツ。製造には、それぞれ20余りの工程があり、工程ごとに専用設備が必要です。私たち生産技術は、それらの設備をひとつに連結した生産ラインを構築するのが仕事。期間も短く、メンバーも限られた中(当初は5人)、社内の生産部門と協議を重ね、設備の仕様を決定し、設備メーカーに発注をかけ、技術供与を受けるデンソーと調整をはかるなど膨大な業務をこなすのは、常に時間との戦いでした。

でもどんな状況でも、決して忘れなかったことがあります。それは「技術者のプライドに賭けても、デンソーさんに負けない量産ラインを完成させてみせる」という思い。ミーティングや普段の会話を通じて、その想いを多くの関係者に伝えたこと、そしてメンバーの困り事は小さなことでも聞くようにしたことが、プロジェクトの推進力になったと私は確信しています。ライン完成度試験で試作品が期待通りの特性値を弾き出し、性能確認を終えたのは2016年3月。居合わせたすべての人に誇らしげな表情を見てとることができました。

Section.03

100人を超える人の力がもたらした成功。

今回、何らかのカタチでプロジェクトにかかわった人は、100人を下りません。当社を信頼し、貴重な技術を提供してくださったデンソーの技術者の方たち。応援に駆けつけてくれたアイシン精機のかつての仲間。難しい要求に応えてくださった設備メーカーの方たち。生産準備室のメンバーも、気がつくと5人から20人にまで増えていました。今回の成功は、そうした人びとのチームワークがもたらした結果でした。同時に、今回のプロジェクトは、ハードルがとても高かっただけに、世界の誰もなし得ない困難な課題に取り組んでいることを肌で感じ、一人の技術者としてこの上なく楽しい時間を過ごせた仕事でした。ギヤポンプを搭載した制御ブレーキ部品は、快適な自動運転の実現に不可欠となる製品。さらに生産性を向上させることで、幅広い車種に普及するでしょう。その技術進化を自らの手で生み出し、安全なクルマづくりを通じて社会に貢献できれば、技術者としてこれほど誇らしいことはありません。