ブレーキ制御設計
車両適合技術部

S.T

前職:自動車ソフトウェア開発

お客様と社内、
どちらも大事な
量産技術窓口の
「2つの顔」。

標準化と前さばきに工夫を凝らす、
プロジェクト進捗管理。

自分が設計した目標性能が試される実車評価試験。お客様にも試乗いただきOKサインをもらい、ほっと安心しつつ、やり遂げた心地よさもある――。20代半ばで転職後、制御ブレーキの製品開発プロジェクトを推進する取りまとめ役の車両適合技術部で、回生協調ブレーキシステムの仕様設計、実車評価からキャリアをスタートしました。

今は中国・日本の自動車メーカーのお客様から受注した制御ブレーキ製品の量産化を実現する、量産開発技術のプロジェクト進捗管理を担当しています。制御・ソフト開発部にプログラムを、制御ユニット技術部にも必要なシステムを依頼し、さらに生産技術・管理、製造など関係部門とも連携しながら量産の流れをつくり出します。特に、新しいお客様や新製品の制御ブレーキは何度も「品質確認ゲート」と呼ぶレビューがあり、資料作成やプレゼンテーションも私の役割です。ハードウェアもソフトウェアも理解するのは大変ですが、細かな仕様の確認や対応を重ねることで知識が広がりました。汎用業務も覚えて、標準化できることは明確に手順化し、他の開発案件にも横展開しています。納期の調整や質問と回答のやりとりなども、なるべく繰り返さない前さばきを工夫しています。

お客様に対しては、営業とともに社内を代表して堂々と。20人を超える社内のプロジェクトメンバーには、お客様の声を代弁しわかりやすく明確に。最終目標の量産化に向けて、みんなが気持ちよく仕事ができるようにといつも考えています。

構築途上にある中国市場で、
初の量産受注へ奔走。

開設から4年目の海外拠点・中国・アドヴィックス常州に3年間駐在したことは、とても印象深く、貴重な経験になりました。中国自動車への売り込みも量産化への仕組みも構築途上だった現地で、営業とともに回生協調ブレーキを中心に、技術プレゼンテーションや交流会に奔走しました。初めて乗用車向けESCの量産受注に成功した時は、嬉しかったですね。当時はアドヴィックスが技術的にお客様をリードする立場で、「アドヴィックスはどうしたい?したいようにするから」と量産開発のすべてを任せてくれて、サプライヤー冥利でした。

一方で、日本よりも短期開発の量産化を求められ、品質を守りつつ、いかにスピード感を高めるかという難しさがありました。ソフトウェアをつくる時間を確保するために、プログラムの書込工程を後ろ倒しにして工期を短縮するなど、今も短期の量産開発を可能にする挑戦は続いています。構成部品を地場メーカーで生産・供給する現地調達体制も含めて、「中国セオリー」の構築はまだ途上です。

そしてもう一つ、「中国セオリー」には大事なことがあります。日本では技術的なエビデンスが重視されますが、中国はそれだけでは承認書類がもらえません。常州から1日がかりで片道4~5時間かけて訪問し、顔を合わせてやっとサインしてもらえる。そんなことが何度もありました。アナログな感じですが、実は技術以上に「その人」を重視しているんです。技術力で納得させるというよりも、人も技術も認めてもらう、ということ。実はそれがアドヴィックスの強みだと、気づかせてもらった気がしています。

CASEや短期量産化へ
ゼロベースで見直し、システマチックに。

自動車産業はこれからEV化など、CASEへと歩みを進め、量産サイクルの短縮化も加速していきます。そこでは、開発スケジュールをゼロベースで考え直すことも必要です。中国も技術的な知見やノウハウが進化し、日本のやり方をそのまま展開するだけでは通用しません。中国のブレーキ市場では先行するドイツメーカーがトップシェアで、売り込みも量産も、とてもシステマチックでした。アドヴィックスは後発になりますが、お客様には同レベルかそれ以上の「アドヴィックスらしいシステマチックな展開や仕組み」を期待されています。

私がプレゼンを続けていた大手メーカーも近年、相次いで回生協調ブレーキやESCの採用が決まって量産化が始まりましたし、のびしろはむしろアドヴィックスの方が大きい。アドヴィックス常州から帰国後も、窓口として日本から挑戦を続けているところです。量産フローの標準化で業務負担を減らし、より効率的でシステマチックにすることが、そのまま成長の推進力になっていくと確信しています。

私自身がまず「何のため」にする業務かを再確認し、「なぜ?」と不明確や分からないことも、質問する前に自分なりに想定しながら一歩進めて「こうしてはどうかな?」と提案する。そんな前さばきをしっかりやって、みんなも巻き込んで方向性をすり合わせていくことができればと思っています。最先端のブレーキサプライヤーとして次代へ、まだ世の中にない先進的な制御機能の開発に、何としてもつなげていきたいですね。