「ブレーキ鳴き」解消への挑戦。

「ブレーキ鳴き」解消への挑戦。

Section.3 限られた時間の中、製品化に向け格闘する

摩擦係数上昇を抑制する材料とは?

ブレーキの鳴きとは「音」である。音がするということは、そこに振動が起きているということだ。ブレーキパッドの変位、剛性、振動状態を把握し、摩擦係数を抑え、ブレーキ鳴きを解消できるパッドを開発する。フリクション技術部へと籍を移した小坂は、プロジェクトチームで解明したメカニズムに基づいた対策案の検討を開始した。

対策の具体化の一番のポイントは、「材料」である。どの材料を変え、どんな材料を加えれば、摩擦係数上昇を抑制できるか、メカニズムをもとに選択した材料を用いた効果確認の検討を繰り返した。

部署の役割の違いも、小坂には一つの壁となっていた。

「研究開発部では、現象を解明し製品設計を行っている部署へフィードバックすることで
製品開発を加速させることが私の役割でした。その現象は、何が原因となっているのか?それを愚直に追い求めて来ました。フリクション技術部は、製品化を前提にした開発を手掛けていく部署であり、具体的な対策に落とし込んでいかなければなりません。製品開発に費やせる時間は限られていますので、『納期』へのプレッシャーは相当に大きいものがあります」

高い機能を持ったブレーキパッドを、他社よりもいち早く製品化できれば、拡販に向けて大きなアドバンテージとなる。故に「より良いもの」をつくるだけでなく、「より早く」つくるスピードも求められる。世界をマーケットにした開発競争の最前線で、小坂は「最適な材料」を見つけるべく模索を続けた。

ついに手にした「原料」。目指すべきゴールへ

一筋の光が差し込んだのは、材料開発を手掛けるエンジニアの情報からだった。「この原料を入れた時の現象は、小坂さんが手掛けている開発のメカニズムにも一致するのではないか」。小坂は、普段から解析や検証の結果の情報を関係各部署に展開していた。その情報を聞いたエンジニアが、自分の持っている情報を小坂に展開してくれたのだ。

「もともと、そのエンジニアの方は、違う効果を狙ってその原料を使っていたようです。一連の評価を行う中で摩擦係数の上昇が抑制されていることに気がつき、私達が考えているメカニズムの検証事例になっているのではと、私に話を持ってきてくれたんです」。

期待する一方で、本当に解明したメカニズムに基づいた効果が得られているのか、念には念を入れなければと思った。まずは、自分ひとりで検証してみた。確かにいいデータが出た。摩擦係数の上昇が抑制されている。でも、まだ喜べない。自分の検証方法が間違っている可能性もある。小坂は、もっと良い検証方法はないかとグループ内で討議。3通りの方法で検証してみた。それでも、結果が変わることはなかった。

「数字が出た時は、本当に嬉しかったです。みんなに報告したくて、思わず関係者全員に一斉メールを送ってしまいました(笑)」。

見えないゴールに向けて、1歩ずつ進んでいった毎日。遠く向こうのほうに、ようやく目指すべきゴールを捉えることができた瞬間だった。