「ブレーキ鳴き」解消への挑戦。

「ブレーキ鳴き」解消への挑戦。

Section.2 摩擦係数の上昇を抑えるには?仮説の検証を繰り返す

ブレーキ鳴きの要因「摩擦係数」に着目

ブレーキ鳴きには、さまざまな要因があると言われている。その一つが「摩擦係数の上昇」である。

摩擦係数の上昇が、鳴きに大きく関わっていることは、以前から知られていた。ただ、「なぜ摩擦係数が上がるのか?」は、いまだ解明されていなかった。

「例えば、冬の朝にブレーキ鳴きが生じます。実際に冬の朝は摩擦係数が上昇することもわかっていました。しかし、その理由が特定できていなかった。もちろん、いろいろな原因が考えられていたのですが、どの説も、他の説を覆すには決め手に欠けていました」。

摩擦係数が上昇するメカニズムはどうなっているのか。データを追ってみても、技術書を読んでみても、どうしても核心に迫ることができない。解明ができなければ、検証も行えず、もちろん対策を講じることもできない。ブレーキ鳴きという現象は、想像以上に手強い相手だった。

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解明への入口さえ見つけられずにいたある日、プロジェクトチームがある画期的なアイデアを形にした。摩擦面の「見える化」に成功したのである。

「ここで詳細をお話できないのが残念ですが、ある手法を用いて、ブレーキパッドとローターの摩擦面で何が起きているのかが目で見えるようになったのです。データからも読み取れず、技術書をひもといてもわからなかったことが、目の前で確認することができる。現地現物で確かめることの大切さを、あらためて思い知らされました」

製品化に向けて、フリクション技術部へ異動

摩擦面の見える化により、ようやく原因の解明への入口にたどり着くことができた。しかし、そこはまだほんの入口でしかない。扉を開けてみると、目の前には、まだまだ果てしなく長い道のりが続いていた。

見える化に成功したプロジェクトチームは、その後、摩擦係数上昇のメカニズムの解明と検証に取り組んだ。研究が進み、少しずつメカニズムが解明されていくにつれ、小坂も次なるテーマに挑むことになった。もちろん、それは「摩擦係数上昇を抑制するブレーキパッド」の開発である。

プロジェクトチームに参加して2年目の秋、小坂は異動することになった。 新しい配属先は「フリクション技術部」だった。

積み重ねた時間と研究成果を、新しいブレーキパッドの開発に注ぎ込む。果てしてなく続く長い道のりを、次は「製品化」というゴールに向けて、小坂は歩み始めた。