「衝突回避支援制御ブレーキを実現せよ」

衝突回避支援制御ブレーキを実現せよ。

Section.3 世界一の性能を持つ製品を

積み重ねてきた知見と技術を注ぎ込む

2012年頃から、クルマの新しい付加価値として「衝突回避」を全面に押し出したプロモーションを行うカーメーカーも出てきた。それまでは、高級車向けのオプション扱いがメインだった衝突回避機能が低価格車へも波及。各カーメーカーは"全車標準搭載"に向けて、性能向上と低コスト化に向けての開発に着手していた。

「いずれ全車標準装備される、安全には低価格も高価格もない平等だ」。これまで積み重ねてきた衝突回避支援に関する知見と技術をさらに注ぎ込む決意をした。

大森のミッションは「衝突判断がされた後、ブレーキを実際にどう動かすか」を考えることだった。クルマには、外界認識センサーを使い『衝突判断』に関するさまざまな情報が入ってくる。しかし、それは「目の前に何があるのか」「どう見えているのか」という情報でしかなく、実際にクルマが今、「どう動いているのか」「どう動こうとしているか」という情報は持っていない。

つまり、どれだけ外界認識センサーが優秀でも、その外界からの信号を受け取ったクルマの状態に合わせて的確な制御をしなければ、精度の高い衝突回避機能は実現できない。

幸い、アドヴィックスは、ブレーキのシステムサプライヤーであり、ブレーキパッドから車両安定制御(ESC)まで含めた豊富な知見があり社内には各種エキスパートが多数いる。大森はこれまでの検討と社内の知見をかき集め、クルマの状態に応じて、いかなる場合でも安定して停止できる制御の検討を重ねていった。

ついに「誤差20センチ」の制御を実現する

衝突回避への動きは、次のようになる。最初にドライバーに向けて警報を鳴らす。その後「これからブレーキが掛かる」という報知を行う。ドライバーへの警告が終われば、速やかに後続車にブレーキランプの点灯などでアナウンスをする。減速に向けた準備を行った後、実際にブレーキが掛かる……この一連の動作を瞬時に行っていかなければならない。

自動車は便利な道具でもあり、様々な使われ方がある。通勤時に一人で運転している場合もあれば、休日に家族全員でドライブなんて場合もある。当然、クルマの重量も変わりブレーキの効きも変わってくる、それでも安定して停止することが求められる。色々なシーンにおいて、クルマはどのような動きをするのか。一つひとつ検討と実証を重ねていき、問題点をつぶしこみ、改善を加えていく。今はその繰り返しです」

衝突を回避するには、衝突までの2秒足らずの時間に相対速度を0km/hにする必要がある。40km/hで走っているとすると、クルマは0.1秒間に約1.1mも動いてしまう。そんな状況下で、安全にクルマを停止させることは簡単ではない。

「誤差20センチとは、動いている先行車に対して『例えば、1メートルの車間距離で止まりなさい』と信号を出した時に、誤差20センチの範囲で止まれるということです。止まっているものに対する制御に比べ、動いているものに対する制御は格段に難しい。技術の詳細は話せないのですが、これまでにない高い性能が実現できたと自負しています。もちろん、これからさらに精度を高め、より高性能なブレーキシステムに仕上げていくつもりです」

繰り返しの中で、考え、悩み、ブレークスルーできる技術を生み出していく。大森が手掛ける衝突回避支援制御ブレーキシステムは、時間を重ねるにつれて精度を高め、現在では「誤差20センチ」の範囲でクルマを停止させることができるまでになった。

大森が目指すのは、もちろん『世界一の性能を持つ衝突回避支援ブレーキシステム』だ。