「衝突回避支援制御ブレーキを実現せよ」

衝突回避支援制御ブレーキを実現せよ。

Section.2 信念を持って製品化に挑む

先行開発を手がける技術者に求められるもの

大森は、開発を進めていく中で『衝突回避には、大きなリスクが伴う』と考えていた。

一つのリスクは、不良作動の問題である。衝突回避の制御は、適切なタイミングで作動しなければならず、動いてはいけない時に動いてはクレームになる。当然、動かなければならない時に動かなければ大問題になる。「どのタイミングで制御を作動させるのか」。その要件設定には細心のバランスが求められた。

二つめのリスクは、後続車の問題だ。先行車などの「目の前にあるものに衝突しない」ことは衝突回避の最大の要件である。しかし、その要件を満たすだけでは不十分だ。なぜなら、クルマは後ろにもいる。ブレーキを掛けたことで後方車に追突されてしまったら、前方の衝突を回避した意味がなくなってしまう。

先行車との距離を制御しつつ、後方車との距離も保てるような制御を実現する。ブレーキが掛かるタイミング、ブレーキを掛けてから無事に停車するまでの減速度や時間など、大森はベストの制御パターンの検討を続けた。

「どんなに考えても、どれだけ提案しても、なかなかカタチにならない時があります。そんな時は、そもそも先行開発をやっている意味があるのか?と思ったこともありました。でも、上司に言われたことがあるんです。『一般に先行開発の90%程度は日の目を見ずに終わる。だからと言って直ぐにあきらめていてはダメである。信念を持って開発を続けた人と市場ニーズがマッチしての10%だ。直ぐにあきらめてしまっては10%も達成できない。』ブレーキはクルマの基幹製品であり、周辺技術がどう変わろうと必要です。簡単にあきらめる訳にはいかないのだ。
だから、ダメだったら、また次を考えていく。先行開発を手掛ける技術者には、そうしたタフさが求められます」。