「衝突回避支援制御ブレーキを実現せよ」

Project Story 02

衝突回避支援制御ブレーキを実現せよ。

Section.1 衝突軽減から衝突回避へ。安全性能はどう進化してくのか

ブレーキ技術の進化が、クルマの安全性能を向上させる

日本国内で、平成24年中の交通事故発生件数は66万5138件、そのうち死者数は4411人にのぼる。交通事故による死者数は12年連続で減少を続けており、ピーク時(昭和45年:1万6765人)の3割以下となった。確実に交通事故による死傷者の数は減っている。
それでも全世界では1年間に約130万人が交通事故により命を落としているという。
※数字は、内閣府平成25年版交通安全白書より
死傷者の数が減り続けていることは、歓迎すべき傾向であることに違いない。ただ、クルマづくりに携わる者としては、いまだ数多くの人が交通事故により亡くなっていることを重く受け止めなければならない。「ゼロ」ではないのだ。

交通事故による悲劇を繰り返さないために、自動車業界は安全性能を進化させるべく不断の努力を積み重ねてきた。ブレーキは、ステアリングと並び、ドライバー自らがコントロールできる部分である。ブレーキを1秒でも早く掛けることができれば、どれだけの交通事故を防ぐことができるのだろう?ブレーキ技術の進化は、クルマの安全性能向上と切っても切り離せない関係にある。アドヴィックスは事故を無くすための主役を担っていると言っても過言ではない。

より安全にドライブできるクルマを。クルマの安全性能の基軸は今、衝突軽減から衝突回避へと舵を切り始めている。「衝突しないクルマ」の開発を目指し、世界中のカーメーカーがしのぎを削っている。その流れをいち早く察知し、"衝突回避支援制御ブレーキ"の開発に没頭し続ける男がいる。シャシーシステム技術部の大森陽介だ。

世界のブレーキメーカーと対等に勝負していくために

各メーカーが水面下で衝突回避機能を搭載したクルマの開発を進めていることはわかっていた。
衝突回避支援制御ブレーキの開発を加速させたのは、あるカーメーカーから「高齢者のドライバーをターゲットにしたクルマをつくりたい。ついては衝突回避に関するブレーキ開発を進めたい」と依頼を受けたのがきっかけだった。

「近いうちに法規が整備され、いずれ衝突回避の機能が全車標準装備されるだろうと思っていました。実際に、欧州ではそうした機能が搭載されたクルマには、保険料が安くなるなどのインセンティブが受けられる動きも出始めていました。衝突回避が実現できないところは取り残される。それは、カーメーカーに限ったことではありません。アドヴィックスが世界のブレーキメーカーと勝負していくためにも、是が非でも衝突回避支援に向けたブレーキ技術の開発を進めていかなければならないと思っていました」。

システムの全体像を考える。制御の仕様を決める。ソフトをプログラミングしていく。構成する部品設計図面に何度も目を通す。試作品が出来上がったら、実車に乗せてデータを採取し、評価と検討を繰り返していく。もちろん、プレゼン用の資料づくりも忘れてはならない……大森は、システムエンジニアとして開発全般に関わっていった。

「もともと、開発から評価まで一貫してやれる仕事がしたいと、アドヴィックスに入社したんです。一人で多くの仕事を進めていかなければならないのは本当に大変ですが、それも自分が望んだことです」。

周辺センシングを含めた新しいブレーキシステムを一から考え、自分自身の手でカタチにしていく。大森は、衝突回避支援制御ブレーキの実現に向けて開発を進めていった。