技術紹介

ADVICS TECHNOLOGY Vol.02 燃費を低減し、環境問題にも貢献する「回生協調ブレーキ」とは

モーターと発電機

誤解する人も多いのだが「回生ブレーキ」という独立したパーツがあるわけではない。EVやHVの駆動源であるモーターを発電機として利用することで電気エネルギーを生み、その発電抵抗によってスピードを落とす。これが回生ブレーキの基本原理である。

そもそもモーターと発電機は、表裏の関係にある。電気エネルギーを得て回転し、運動エネルギーを生むのがモーターだが、逆に外部から力を加え回転させると、電気エネルギーが発生し、発電機として機能する。この二面性を上手に活かせば、「下り坂で発電して、その電力で上り坂を進む」といったことも理屈上はできるわけだ。

街中走行を省エネ化

回生ブレーキが働くのは、ブレーキペダルを踏んだ時だけではない。

ドライバー自身が意図していなくても、まずアクセルから足を離した瞬間に、回生ブレーキは始動する。ここでモーターへの送電が途切れても、タイヤは回転し続けている。そこで回生システムはこの運動エネルギーをモーターに伝え、電気エネルギーを創出。同時に発電抵抗によって制動力(ブレーキが効く力)が生じるが、ここでの働きは、感知されない程度のわずかなものである。またもちろんブレーキペダルを踏めば、その踏み込み量に応じて、必要な大きさの制動力が働くことになる。

こまめに加減速を繰り返す街中走行の場合は、この仕組みによって大きなエネルギーを得ることが可能だ。たとえばトヨタ自動車からは「プリウスで100km街中を走行した場合、回生ブレーキによってガソリン1リットル分に相当するエネルギーを得ることができる(※)」といったデータも公表されている。つまりはそれだけの省エネ効果があるわけだ。
※出典:トヨタ自動車ホームページ

回生協調制御こそが鍵

もともと回生ブレーキ自体の歴史は古く、鉄道などでもおなじみだが、これが自動車分野でも脚光を浴びるようになったのは、HVやEVが普及してからのことだ。

もちろんクルマのブレーキは、どんな場合にも確実に、必要な大きさの制動力を生まねばならない。しかし回生ブレーキだけでは、この基本条件をクリアできないため、油圧ブレーキとの協調制御が必須となる。これが「回生協調ブレーキ」と呼ばれる理由であり、またその制御技術こそが、開発上のポイントになる。

回生協調ブレーキが果たすべき役割は、ドライバーの要求制動力を完璧に実現しながら、同時に最大限のエネルギー回収を行うこと。そこでアドヴィックスは、油圧ブレーキ分野で培ってきたノウハウを生かし、回生制動力の変化に応じてきめ細かく油圧制御を行うシステムを開発してきた。この油圧ブレーキと回生ブレーキのバランス制御が、燃費を向上させる鍵であり、安全性を担っているというわけだ。

安全確保のみならず、環境問題にも貢献する回生協調ブレーキ。それは別な角度から見れば、実にデリケートかつ複雑な制御技術の代名詞でもある。