FUTURE 急発展する新興国社会に潜む自動車事故増のリスクに解はあるか?

「交通事故死ゼロ」実現のためにMade in JAPANの知恵を世界へ。家電や情報機器など、いま業界を問わず、消費者からは見えない大変革が始まっている。商品名はそのままに、部品がごっそりと入れ替わるという地殻変動。それは自動車業界でも同様だ。これをADVICS流に翻訳すれば、いまこそメガサプライヤーの布陣を突き崩し、世界No.1の座を勝ち取るチャンスということになる。極限的な低コストで、世界最高の安全を実現するのがADVICSの目標。その先には「交通事故死ゼロ」の夢がある。そんな未来への展望を、技術開発のカナメである技術部長に聞いてみた。

余語和俊 シャシーシステム技術部 部長 ABSやTCS、ESCといった制御系に長く携わってきた生粋の開発者。現在は機構・ECU・ソフト開発を取りまとめるシャシーシステム技術部のトップを務める。

同じ道を歩いてきた我々だから解決できる

日本の交通事故のグラフ

いま新興国では、急速にモータリゼーションが進んでいます。
世界の自動車生産台数は8522万台から、2022年には1億550万台(※1)に膨らむと予測されていますが、牽引役となるのは新興国。そして、その経済発展に伴う社会問題が、交通事故の増加です。
WHOの報告(※2)では、交通事故死の92%が新興国など低・中所得の国々で起きているとのこと。たしかに、信号や歩道の整備が遅れている状態で車両が急増すれば、リスクが高まるのも当然でしょう。これはかつての日本でも同様でした。
日本の交通事故 死亡者数は2012年で4411人ですが、高度経済成長中の1970年は1万6765人。つまりこの40年間で、1/4にまで減少したわけです。その原動力はインフラ整備、啓蒙活動、そして業界各社の技術革新など、地道な努力の積み重ねにありますが、いまの新興国にも同じ苦闘を強いる道理はありません。すでに見えている課題を解決するのは、先人としての義務。経済発展を続ける中での安全確保も、私たちの技術で支援していきたいと思っています。
※1出典:株式会社アイアールシー 世界自動車業界の生産・販売台数予測調査2012年度版
※2出典:WHO世界交通安全委員会レポート 「道路を安全なものに(Make Roads Safe)―交通安全のための行動の10年―」

ブレーキでクルマ全体を安定制御する

私たち自身の安全技術を見てみましょう。
ブレーキ周りではABSの普及はもちろん、ESC(横滑り防止装置)も米国やEUなどで義務化。また日本でも、2012年から段階的に義務化されています。ブレーキは、かつてクルマを止める部品だったものから、クルマそのものを安定制御するシステムへと進化したのです。
当社の技術役員がよく言うのですが「私たちはブレーキを使ってクルマを“曲げて”いる」……これは私の新人時代には危険視されていた技術です。しかし現在では「ESC装備により単独事故の発生率が44%減少」とデータで実証されています。
いまは運転支援や衝突回避といった夢が、次々に現実へ変わりつつある、時代の境目です。 アドヴィックスはちょうどその転換点に生まれた企業。最初からシステム全体を視野に入れ、なおかつ電子制御ブレーキからパッドまでを手がける、世界No.1のブレーキシステムサプライヤーを目指して誕生した戦略企業 です。
すでに世界には強力なグローバルサプライヤーが存在します。しかし若く新しいアドヴィックスだからこそ、よりクレバーな戦略が実行できると実証したい。これからがその本番です。
※出典 自動車事故総合分析センター(ITARDA)ホームページ 「ESCの有用性とは?」

貧富の差を安全の差にしてはならない

現在の世界シェアを拡大し、私たちの安全技術を広めるには、何が必要でしょう。
第一の条件はコスト低減。どんなに優れた製品も、世界中の人々の手に届かなければ意味がありません。そのためにはグローバル・サプライチェーンの構築と、現地での生産強化が必須です。
もちろん楽な話ではありませんが、ごく微細な部分まで徹底した品質の創り込みと、同じく細部まで配慮したコスト低減とは、日本メーカーのお家芸です。いま私たちはこの強みを活かし、各国での生産体制構築を急いでいます。
第二の条件は、地域別ニーズに即応した製品開発です。たとえば交通マナーが浸透していない国では、よく飛び出しなどのアクシデントがありますから、ペダルに足を乗せたら劇的に効くといったブレーキも有効かもしれません。これは日本市場ではあり得ない製品ですね。またハイドロブースターなどの特色ある製品も、個別ニーズに応える大きな武器になります。
さらにこの安全技術をより広く伝えていくために、当社はBOSCHやContinentalと協力しながらESCの認知活動も展開しています。この地道な普及活動は、前にご紹介した各国による義務化にも貢献していると言えるでしょう。
しかしたとえESCの義務化が進んでいない国であっても、技術で安全を実現していくのが私たちの使命です。
安全は平等に与えられるべきもの。貧富の差を安全の差にしてはならないのですから。

全世界のために。アドヴィックスだからできること

環境負荷もクルマの急増により生じる社会問題のひとつです。こちらは一見ブレーキとは関係ないようですが、回生協調ブレーキにより、省エネにも貢献するブレーキが現実のものとなっています。将来はひょっとしたら摩擦型が消え、すべて回生型ブレーキになるかもしれません。そうなれば我々の事業そのものも大きく変わるでしょうね。
いずれにしてもコスト努力は重要ですが、私たちはやはり「技術で勝ちたい」と望んでいます。幸い当社には、当社誕生の母体となった3企業が培ってきた深く広い技術基盤があります。恵まれた開発設備があります。若手の意見が経営陣に届く柔軟な体制もある。そしてめざすのは進化した予防安全……運転支援、プリクラッシュ(衝突被害軽減ブレーキ)、ITSなどの可能性も控えています。
また既存技術をより大胆に使う発想も大切。技術を提供するステップも、我々がたどった同じ道……ABSからESCへといった段階を踏む必要はありません。1960~70年代のマイカーブームでクルマが増えたときに、同時に事故も増えてしまうという日本の経験と同じ轍を新興国が踏まずに済むよう、安全技術は今、必要なところへポンと飛べばいい。アドヴィックスにはそんな戦術を展開できる力があります。
いま日本No.1の我々がやれなければ、おそらくどんな企業にもできないでしょう。「交通事故死ゼロ」の実現へ、本気で志す人の参加を待っています。

※取材内容、および登場する社員の所属は取材当時のものです。

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